Amigos No.89-2
2009年12月
3回目のペルー訪問
明るくなっていた学校と子どもたち
*コマスの小学校を訪ねて*
久堀 洋子
CALOの算数ドリル・絵本配布の活動で、ペルーを訪れるのは今回で3回目。
1回目は、1997年、まだ現役の小学校教師だったとき。
2回目は2004年。そして今回。初回から、なんと12年も!
現地スタッフのカルロス君は亡くなって、会えなくなったのが残念だけれど、ジャネットさんに男の子が誕生。
ペルーは? 今まで訪れた学校は? どう変わっているだろうか。
最近、スペイン語を習い始めたので、子どもたちと会話が交わせるかな、というのも楽しみのひとつ。
=前回の訪問時には=
今回訪問した5校のなかで、一番印象的だったのは、コマスのColegio 2072 USE04小学校だった。
ジャネットさんのお姉さんの紹介で2002年から訪問している学校である。前回(5年前)訪問した学校6校の中で、ダントツに貧しい学校だった。
大半の子供が制服を着ていない。顔はすすけていて、靴も泥だらけの子どもが多い。
狭くて傾斜した運動場に、子どもたちが整列して私たちを迎えてくれたが、きちんと並んでいなくて、
女性の校長先生の話を聞きながら私たちの方を興味津々で見ていた。
そして、ずりずりと私たちの方に近づいてきては、先生に注意され整列しなおしていた。
子どもたちが騒がしくなると、校長先生が号令をかけ、子どもたちはそれをリピートして、一瞬は静かになるが、またすぐ騒々しく!
それでも、校長先生はじめ教師たちに、新しい学校づくりの気概が感じられ、
「この子どもたち未来が拓けますように」と思ったのをまざまざと思い出した。
=歓迎されて「CALOの教室」へ=
私たちの乗ったマイクロバスが到着すると、5年前と同じ女性の校長先生がぴしっときめたスーツ姿で出迎え、校門を開けてくださった。
運動場は舗装され、足形に切り取られた色画用紙が2列に並べられ、道が出来ている! 私たちの通る歓迎の道!
よく見るとその足形にCALOへの感謝や歓迎の言葉が書いてあるようだ。なんというアイディア!
なんと女子生徒がひとり浴衣を着て立っている! 前回生徒に浴衣を着せるパーフォーマンスを子どもたちに見せたっけ!
でも、着方が何となくへん! 梶田さんと戸田さんが急いで着せなおすひとこまも。
CALOが寄贈した「CALOの教室」と呼ばれている新しい教室。
今まであった教室の外装もすっかりきれいになり、運動場が舗装されたこともあり、学校全体が明るく、清潔になっている。
手に手にペルーと日本の国旗を持って、子どもたちが運動場に並びはじめた。どの子の顔もにこやかで、生き生きしている。
こんな子どもたちに会えるのがなによりうれしい。おー! 並び方も上手になっている!
いつものように、梶田さんの挨拶があり、CALOのメンバーも一人ひとり紹介される。
どの学校も華々しく歓迎してくれるが、この学校は、細かいところに配慮があり、心のこもった歓迎が、とてもうれしい。
=算数ドリルを使っての授業=
歓迎式のあと、各教室を回った。薄暗かった教室が何だか明るく感じるのは、照明が良くなっただけではなく、
何よりも子どもたちの顔が明るくなったせいの様な気がする。教室の掲示も工夫されていて、カラフルなのが楽しい!
算数ドリルを使った授業も行われていた。前は、算数ドリルは次の学年の子どもたちに渡すため、直接かき込まないようにしていたが、
今は個人持ちになっているようだ。算数ドリルを持っていない子どもも? こんな忘れんぼの子どもは何処にもいるよな。
CALOの活動も浸透してきたのだな、と思わされた。
案内して下さった校長先生が、子どもたちにそっと声をかけたり、背中をさわって姿勢をなおしたり、
服のボタンをとめたりと、優しく暖かく指導している姿にはつくづく感心させられた。
=絵本を活用した授業も=
ある教室では、「おやすみなさい フランシス」の読み聞かせの授業が行われていた。絵本を持って読むのではなく、
絵本の絵を模造紙大に拡大コピーして、その下に本文をかいたものを上下2本の棒を操作して見せるというもの。
何というアイディア!上の棒で紙を巻き取りながら、男の先生がゆっくりと読んでいく。子どもたちは集中して見ている。
長い物語なので、巻き取る上の部分がどんどん膨らんでいく。
先生が横に立って読むので、ちょっと読み間違うと、子どもたちがすぐ言い直したりする。よく見てるなあ。
こぐまのフランシスが眠れなくて困っていたのが、やっとパパの側で寝られることになる結末では、上の部分が丸太のように膨らみ、ゆれていた。
後で聞いたら、この拡大絵本のアイディアは読み聞かせをしていた先生が考えたもので、本文も彼が書いたそうだ。
どのぐらいの時間がかかったのだろうか? 以前、もっと小さなスタイルのものを見たことがあるが、色々試みているのだな。
絵本もこうやって活用してくれているのだ。
=手応えが感じられた=
帰り際に、校長先生に生徒数を尋ねると、317人。教師は12人。もっと驚いたことには、障害を持つ子どもを17人も受け入れているとのこと。
教育設備が整ってきたとはいえ、12人の教師で学校を運営し、障害を持つ子どもたちの教育までやっているとは!
きっと、校長先生と教師集団が、アイディアを出し合い、問題をクリアして、新しい指導方法と形態をつくり出していくのだろうな。
子どもたちの未来が拓かれていく、という手応えを感じることが出来た訪問だった。
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