Amigos No.94-1
2011年3月
・・・CALOに舞い降りた・・・
「たいようまでのぼったコンドル」
CALOでは今まで30冊以上の絵本をスペイン語に翻訳して、中古絵本を集めてペルーの学校へ贈る活動をしています。
今回、ひょんなことから、中古絵本ではなく、出版されてすぐの絵本を翻訳してくれないかとのお話がありました。
私たちにとっては初めての経験で、まさに「舞い降りた」感じでした。
昨年末、福音館書店からこどものとも、「たいようまでのぼったコンドル」という絵本が出版されました。
この絵本は題名の通り、アンデスに生息するコンドルをテーマにしたお話です。しかし、アンデス地域にあった民話ではありません。
これは、子どものころからアンデスの音楽を好きになり、アンデスにあこがれていたひとりの日本人絵本作家が書かれたのです。
彼女は「乾 千恵(いぬいちえ)」さんといいます。
彼女は念願かなってボリビア、ペルーのアンデスを旅してその雄大な景色や人々の生活を目にしました。
なかでも子どものころから「コンドルは飛んでゆく」を聴きながら想像を膨らませていたそのコンドルを目の前にした瞬間
「ハッとして、胸が震えた」そうです。そして、「何者をも寄せつけない、圧倒的な威厳に満ちています。
同時にその姿からは、言い知れない寂しさがひしひしと押し寄せ・・・」と、大きな感動を受けられました。
その感動をもとに、民話や伝説に出てくるコンドルも知り、長い時間をかけてこのすてきな物語を生み出されました。
人間の娘とコンドルの深い愛がテーマになっています。
また、秋野 亥左牟
(あきのいさむ)さんの絵はすばらしい色彩で、景色はもちろん、繊細な絵の隅々までアンデスを懐かしく思い出せるほど、ていねいに描かれています。
マンタやポンチョ、帽子などの民族衣装の色使いも美しく、リャマもアルパカも、
土間で飼われているクイ(モルモット)までもアンデスの生活を彷彿とさせるものです。
書店でぜひ一度手に取ってみてください。私たちもこの依頼を受け、翻訳途中の絵本も一時休んで、すぐにこの絵本の翻訳に取り組みました。
絵本「たいようまでのぼったコンドル」の翻訳
翻訳依頼の電話が
昨年12月に作者・乾さんから翻訳依頼の電話をいただきました。 彼女はこの絵本を健康の問題も抱えながら約10年もの年月をかけてやっと完成されたのでした。 そして、これをぜひペルーの子どもたちに届けたいとの強い思いがありました。 お話を聞いて私も共感し、こういうことに協力できることこそCALOのような小さなNGOが引き受けられる意義ある仕事ではないだろうかと思いました。 早速CALOの例会でみんなに話し、賛同を得ました。そして翻訳を引き受けることになりました。
翻訳上の問題にも直面
早速送られてきた絵本を前にして、まず、美しい絵に見入ってしまいました。
少女チャスカと青年マユクに姿を変えたコンドルの恋の物語にほのぼのとした気持ちになりました。
CALOの翻訳メンバー数人は、例会以外の日にも出来る人は集まりました。
ネイティブのテレサさんカルロス君、ロサさんの協力も大きかったです。
今までの翻訳と違い、作家さんに直接頼まれているので、翻訳についても何か所かは作者・乾さんの意図を確かめる必要がありました。
たとえば、主人公の少女の名前のチャスカや青年の名前、マユクなどの綴りはどうなんだろう、と考えました。
乾さんにお聞きするとやっぱり、ケチュア語からとっている名前なので、スペイン語的な綴りではなく、ケチュア語的な綴りを考えられていました。
また、「コンドルのはねをひろって・・・」と言う箇所では、羽根は1本ではなく、「数本」だったということがあります。
これは日本語には複数形がなく、スペイン語でははっきり表現しないといけないからです。
乾さんは体調のすぐれない時にでも、ていねいに、何度もチェックに応じてくださいました。そして、1月半ばにやっと翻訳が仕上がりました。
今まで考えることがなかったような翻訳の問題に気付いて私たちもいい勉強になったねと話し合いました。
出来あがりに大きな達成感
スペイン語訳文を貼りつけるのにも、今までと違う問題がありました。
この絵本の美しい絵は頁全面に描かれています。その上に字が書いてあります。
その字の上にスペイン語訳のシールを貼ってしまうと、せっかくのきれいな絵も隠れてしまいます。
それで、シール用紙にはスペイン語は出来るだけ小さなポイントで打ちだして、
ページの絵のなるべく邪魔にならない場所に貼りつけることにしたのです。
出来あがった「翻訳絵本」を早速、乾さんにお送りしました。とても喜んでくださいました。
私たちも大きな達成感を得ることができました。ありがとうございました。(梶田)
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