Amigos No.80-3
2008年4月
中原里美
中米のニカラグアの首都マナグアに住んでおられた中原里美さんからの原稿は今回でいよいよ最終となりました。先号から引き続いて滞在されたこの2年間の「5大ニュース」の最後の1位と2位です。地理的にも「遠い」そして日本の普段の生活ではあまり耳にしない国ニカラグアについて、ずいぶんいろんなことを知らせてもらいました。ちょっとその距離は縮まったでしょうか。毎回、興味深い原稿をきっちり送ってくださった中原さんに感謝します。ありがとうございました。
1979年革命により、ソモサ一族による長期独裁政権を倒したサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)が政権を樹立しました。その後1985年の選挙で大統領となったダニエル・オルテガが、2007年政権の座に返り咲くことになりました。今年1月10日は就任1周年ということで、各地でサンディニスタによるパレードが行われとてもにぎやかでした。
この政権発足に関して私が一番印象に残っていることは、大統領就任式典のことです。テレビでその式典を観ていたのですが、各国の大統領が続々と集まり、会場では民族舞踊のダンサーが待機していたりするのですが、いつまで経っても始まらない。大統領就任式典もラテン時間で始まるのかしら?と思いつつ観ていました。
テレビのアナウンサーも「もうそろそろ始まります」を繰り返すのみ。どうなっているのかな?と思っていると「ベネスエラの大統領ウーゴ・チャベスの到着が遅れています」とアナウンサーが言っています。この式典は、ウーゴ・チャベス大統領待ちで1時間も遅れたのでした。そして、式典が始まると大統領ダニエル・オルテガの隣には常にチャベス大統領の姿がありました。この大ニュースが2位です。
この場でも何度も書いたこともありますし、これは出来事とは呼べないのですが、私が個人的に、ニカラグアで最も印象深かったのは停電と断水の2つです。本当に多いのです。しかも、停電5〜6時間なんて当たり前、12時間なんていうのもあります。それがほぼ毎日。お友達と会ったときには、「今週はうちの地域は午前中電気ないから、お宅でお茶しましょ」「来週は午後停電すると思うから、来週午前中ならいいわよ」「あのレストラン発電機あったけ?この地域今停電中なはずだから行かないほうがいいんじゃない」なんて会話が挨拶代わりです。そしてこれは2年間、ほとんど変わることがありませんでした。今じゃすっかり慣れましたが、不便ということには変わりありません。
断水に関しては、2通りあって、貯水タンクが地下にあってそれを電力でくみ上げているところが多いので、停電すると当然、水も出なくなるというパターンと、水不足での断水というもの。後者に関しては、私たちが住んでいるような家には、ほとんど予備の貯水タンクがありそこに常に水をためているので、水量が低くなっても、まったく出なくなるということはあまりありません。
停電がひどい時期、停電で冷蔵庫が止まり売り物がだめになった店主などがよく紙面をにぎわしていました。怒った人々が電力会社に投石したり、プラカードを持って行進したりするようなこともありました。
この件に関して印象深いのが、2006年度の電力会社のコマーシャルです。テレビと新聞となのですが、内容は以下のようなものでした。
テレビ:電力会社のオフィス。事務員がコンピューターに向かい笑顔でお客様の対応をしています。とそこで、突然真っ暗に。真っ暗な画面に次のような文字が白浮きで出ます。「当社も停電しています。我が社は、電気を作っているのではありません、供給しているだけなのです」。
新聞も同じです。黒く塗りつぶした紙面に同じ文章が白で書かれています。これを最初に見たときは「えーっ!!」と思いました。そういう問題じゃあないと思うのですが・・・最近は見なくなったのですが、その発想に驚いたものでした。
2006年から始まったこのお便りも、今回で終わりとなります。今までお付き合いいただいて、ありがとうございました。これをきっかけに、ニカラグアという国に興味を持っていただけるとうれしいです。また世界のどこかからみなさんにお便りできる日が来ることを楽しみにしています。
2006年10月発行のAmigosNO.71 から、中原里美さんによるこの連載が始まりました。彼女は2006年4月より中米のニカラグアに住み始め、この4月には日本に帰国されています。 読者の皆様には、この連載を通して、地理的にも文化的にも「遠かった」国が少しは近くなったのではないでしょうか。 ありがとうございました。回数のナンバリングが間違っていました。お詫びして訂正します。今回で10回でした。(編集) |
このページのトップに戻る | 会報誌「Amigos」の目次に戻る | 「ホーム」に戻る
|